|
太田 肇 (おおた・はじめ)氏(1954年兵庫県但東町生まれ。同志社大学政策学部教授、組織論。人の働く動機づけの最大のものは「他者から認められたい」という「承認欲求」であるという「承認論」を世界で初めて提唱、現在この論はスタンダードになっている。NPO法人企業内コーチ育成協会顧問)
上司部門、部下部門とも大賞、準大賞に選ばれた事例は、「承認」の模範例といっても言い過ぎではないほどレベルが高い。具体的な評価は「選考理由」に詳しく述べられていて、私もそれに同感である。
上司部門の大賞に選ばれた事例では、「訊く」というコミュニケーションのきっかけ作りに最適な方法をうまく取り入れている。最近は新入社員など若い部下とのコミュニケーションの取り方に悩んでいる人が多いが、これならどこの職場でも実践できるだろう。しかも、部下から訊かれることで上司自身も承認され、相互承認の関係を築くことができる。
上司部門準大賞の事例も、それに劣らず優れた実践例である。プロフェッショナルやモチベーションの高い部下、成熟度の高い人に対してはピッタリの一言である。大賞の事例とは対照的な接し方だが、いずれも「承認している」というメッセージがしっかりと伝わる。このように、部下のモチベーションの水準、精神的な成熟度などに応じて望ましい承認のしかたも違ってくる。
部下部門大賞の事例は、いわば「承認の達人」による一言が、いかに部下のやる気や働きがいを引きだすかを象徴的に表すエピソードである。減点主義によって部下を萎縮させるのではなく、ミスをしても必要以上に責めず、長所を認めることには、挑戦意欲を持続させるばかりか、失敗を心から反省させる効果もある。また「戻ってきて」というのは信頼の表れであり、心からの承認と言える。
部下部門準大賞の「社内MVPをとろう」というのも簡明直截でわかりやすいメッセージだ。
承認は、する側とされる側の心の交流であり、決まったパターンをいつでも使えるわけではない。今回授賞された事例では、相手の心をつかんだ絶妙な承認の一言が発せられており、背後には日ごろ育まれた人間関係や部下への鋭い洞察があったものと想像される。(了) 2011年10月10日
|